山梨9条の会・山梨女性9条の会が主催した講演会&県内9条交流会は、「ぴゅあ総合」に110名の参加者が集い、伊藤さんの「9条・私たちにできること」と題するわかり易く興味深い90分ほどの講演に多くのことを教えられ、元気をもらった。
その後
1時間ほどの交流会で学びあい、大成功のうちに終えることができた。

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講演会 

 伊藤千尋さんの講演要旨

 

1 世界が憲法9条を求めている


伊藤さんは最近訪れた沖縄県高江での市民の基地反対の闘いから話を始め、次いで世界と日本の各地に
9条の碑があることを実際に訪問した体験を交えて語った。アフリカの西海岸にあるスペイン領カナリア諸島の一つグラン・カナリア島のテルデ市の「ヒロシマ・ナガサキ広場」の一角に日本の憲法9条をスペイン語訳しが記された記念碑がある。この島の人々が90年代に展開した非核運動の中で19961月に建設されたものだ。トルコのチャナッカレにも「ヒロシマ・ナガサキ広場」があり日本の憲法9条の碑が建てられている。このように世界の多くの人々が日本の憲法9条に具体化された平和への願いを共有している。沖縄本島の読谷村と宮古島にも9条の碑がある。コスタリカは日本に次いで戦力放棄を憲法に定めた国だが、201722日にコスタリカの国会は「日本とコスタリカの市民にノーベル平和賞を」という決議を行った。

 

2 トランプの米国と安倍の日本、世界の方向
 

「トランプと安倍首相に共通する発想」という項目で、伊藤さんは「積極的平和主義」の本来の(平和学的)意味と、安倍首相がごまかしで使っている意味の違いを説明した。安倍たちのいう積極的平和主義とは、やられる前にやっつけるという先制攻撃(Proactive Contribution to Peace)のことであり、平和につながるものではない。「積極的平和主義」の本来の意味は、内戦や国際紛争の火種となる差別、格差、イジメなどをなくして社会的平和をもたらすこと。平和とはただ戦争がないことではなく、紛争をなくしていく不断の努力を意味する。

 安倍政権はようやく南スーダンからの自衛隊撤退を決めたが、本来ここは日本が部隊を派遣する必要が無いところで、自衛隊派遣の実績を作りたいだけで派遣しているのだ。

 核兵器禁止条約交渉への世界の流れとして、昨年12月に国連総会で交渉開始が決まった「核兵器禁止条約」(これに、日本はアメリカの立場を支持して反対票を投じた)については、平和憲法を持つもう一つの国コスタリカの提案が大きな役割をはたした。

 

3 平和も人権も憲法を活かすコスタリカ
 

伊藤さんは朝日新聞の元中南米特派員としてこの地域の国々を広く訪れているが、とくに1949年に平和憲法を定めたコスタリカには特別な関心を抱き、しばしば訪問している。この国も以前は軍隊を持って年間予算の30%が軍事費だった。だが、平和憲法を制定して軍隊をなくし、「兵士の数だけ教師を作ろう」、「兵器の代わりに楽器をもとう」、「兵舎の代わりに博物館を作ろう」などのスローガンで、市民生活の充実に力をいれた。福祉教育政策が充実しているので、周辺国から難民が流入して、10年前400万だった人口が今500万人に増えている。子どもたちもこの平和主義を学校でしっかり学んで育つ。伊藤さんが街で何気なく声をかけた高校生が平和憲法にについて歴史的経緯をふくめて10分以上きちんと説明してくれたとのこと。2004年、アメリカのイラク戦争を支持する意思を表明した大統領を相手取って大学生サモラが違憲訴訟を起こして裁判所はこの訴えを認めた。20171月に来日したサモラ君は「憲法が危機に陥ったとき、有権者はこれを護るために闘う義務がある」と語った。

 

4 どうすれば日本を変えられるか
 

「反対」だけでなく、対案を示して世論にしていくことが重要だ。自衛隊のカンボジア派兵に対するコスタリカのアリアス元大統領は、①兵士ではなく、白衣の医師、看護婦を送る、②カンボジアの主要産業である農業の専門家を送る、③将来の市民である子どものために教師を送る、という対案を示した。

 例えば、原発反対をいうだけでなく、対案を用意する。フィリピンはマニラに近いバターン半島に原発を建設したが、1986年の政権交代でこれを稼動させず、代替エネルギーとして地熱発電開発を進め、いまや世界2位の地熱発電大国になっている。アイスランドには世界最大の露天風呂があるが、これは地熱発電でタービンを回した蒸気が温水となったものを利用しているものだ。フィリピンもアイスランドも、地熱発電の施設の多くは日本製であり、日本は火山・地震大国なのだから、地熱発電の可能性は極めて大きい。原発20基分にあたるエネルギーが得られるし、放射能事故や放射性廃棄物の後始末の心配がない。

 韓国で朴槿恵大統領を退陣させた市民の運動には、現在の日本にはない2つの方法がある。一つは歌である。フォークシンガーが作った「下野せよ」という歌が市民の結集に役立っている。もう一つはスマホによる発信が少数の訴えを広げるのに使われている。

 日本でも、自公政権が強力そうに見えるが、昨年の参院選や知事選では、野党共闘の強さが目立つ。知事選では自民党は7連敗している。必ずしも過半数はいらない。社会を変える15%の法則がある。ベルリンの壁が崩壊する前の198910月、ライプチッヒでは5000人の集まりは警官隊に圧殺された。だが、これが日々数を増やして7万人になると、警官は弾圧を止め、デモ隊のために交通整理をするようになった。この時ライプチッヒの人口は60万、われわれの運動もこれにならいたい。 

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参会者の感想


伊藤さんは日本国内や世界各地を精力的に訪問しているが、今回の講演では各地で撮影した多くの関連画像を示しながら、元気に
90分お話をして下さった。参会者に書いていただいた感想文からいくつか紹介したい。
 

「日々腹立つことが多いニュースに明るい気分になれず沈んでいました。今日のお話は研究者や学者先生ではなく、世界各地を見た体験に裏打ちされ実践・実況報告のようでした。まるでドラマを見るようにテンポ良いお話の盛り上がりがわかりやすくて世界が身近に感じられました。『15%の法則』、1113%でもよいとのこと、気持ちが楽になります。力強いお話を聞かせていただき感謝します。元気になりました。日本を変える力に私もなれそうです。」(60Tさん)
 

「『憲法が活かされていない国はにほんですね』という講師のお話に『そうだ』と私も強く思います。『戦争放棄』という立派な平和憲法があるのになぜなのか?軍隊をなくしたコスタリカに学び、9条の会の活動に参加し、一歩一歩(できれば爆発的に)今の安倍政権を倒し、民主主義が生きる日本にしたいと思いました。とても学べた講演に感謝します。」(70代の匿名の方)
 

「力強く誠実で、多くの現場を見てきた確かな“眼”、“心”が伝わり、目が覚める思いでした。やはり講演を聴きに来てよかった!これからの活動の中で、今日のお話のひとつひとつを思い出しながら進んで行きたいと地震がもてました。ありがとうございました。」(匿名)
 

「コスタリカの高校生に質問したとき、30年前の歴史から語り始めた話を聴いたとき、感動して涙まで浮かんできました。久々に心からの感動でした。今わたしは何をしているのかとつくづく考えてしまいました。・・・今日の講演とても良かったです。何より、とても良くわかりました。」(70代匿名)  


交流会 

講演会のあと、9条の会交流会が行われた。細部は省略するが、報告があったのは次の6つの「9条の会」と「安保違憲訴訟やまなし」であった。最後の山中湖は休眠中だった会を最近になって再開する準備を開始したとのこと。元気な活動が開始することを祈りたい。報告は無かったが、山梨市9条の会など、他の団体からも参加者があった。
 

  1. 北杜9条連絡会
  2. 市川三郷九条の会
  3. 南アルプス市・9条の会(急な事情により紙上参加)
  4. 甲府9条の会
  5. キリスト者9条の会
  6. 山中湖村9条の会

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カンパ報告

 

会場で今後の活動のためにカンパを呼びかけたところ、43,107円集まりました。ご協力に感謝します。