安倍内閣は1115日午前、南スーダンに派遣する自衛隊に、従来の民生安定とは異質の、
海外での武力行使につながる任務を与える実施計画を閣議決定した

これは昨年
919日に国民多数の反対を押し切って成立させた安全保障法制がPKO活動について新たに認めた「駆けつけ警護」という形の武力行使を任務とするもので、
海外での自衛隊任務が拡大されるのはこれが初めて
これについては、野党や市民団体から、これまで避けられてきた自衛隊による戦闘行為の可能性があり、
1945年以来全くなかった日本の軍事行動による死者が出る危険性があるとして強い反対の声がある。


 

南スーダンは、20117月にエジプトの南に位置するスーダン共和国の南部10州が分離独立して誕生した国で、北はスーダン、東はエチオピア、南東にケニア、ウガンダ、南西にコンゴ民主共和国、西に中央アフリカと国境を接する内陸国である。

分離前のスーダンでは、アラブ系イスラム教徒が多い北部が、キリスト教徒が多い南部を支配する構図が定着していたため、
23年間の内戦と6年間の移行期間を経て、住民投票の結果、南スーダンが分離独立した。困難な過程を経て実現した南スーダンの誕生は、アフリカにおける新たな希望であった。移行期間に停戦監視を行ってきた国連スーダン・ミッション(UNMIS)は、独立とともに国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)と名称を変えて引き続き治安維持と民生安定の仕事をしている。
 

だが、南部に豊富な石油資源があることと、民族対立などが原因で、大統領派と前副大統領派が対立、201312月以降内戦が起きている。この対立は、単なる利権争いではなく、キー大統領はディンカという民族、マシャル前副大統領はヌエル民族の出身という、民族対立という面もある。周辺国の仲介で20158月に和平合意が結ばれ、今年4月には国外に逃れていたマシャル氏がジュバにもどって副大統領に復帰したが、今年7月に首都のジュバで再び軍事衝突が起きて270人余りの死亡者が出たために、マシャル氏はまたも副大統領を解任されて現在は南アフリカにいる。108日には民間人を乗せたトラックが襲われて21人が死亡し、14日と15日には北東部で政府軍と反政府軍の戦闘が起きて、少なくとも60人が死亡している。

 

戦闘は国内各地に広がっており、数万人が死亡し、230万人が避難している。国内はどこが安全でどこが危険といえない混乱状態で、7月の戦闘では首都ジュバでPKOに参加している自衛隊宿舎の隣でも銃撃戦があり、流れ弾が宿舎に飛び込んできたという。現在現地に派遣されている自衛隊の任務は、道路の修築など非軍事のものだけだが、
この自衛隊派遣そのものが、現状では
PKO協力法の定めている原則に反している疑いがある。


さまざまな反対を押し切って
1992年に成立したPKO協力法には、参加するにあたりPKO5原則を遵守するという条件がつけられているそれは、次のとおり。

(1)紛争当事者間の停戦合意が成立していること、
(2)受け入れ国を含む紛争当事者の同意があること
(3)中立的立場を厳守すること
(4)以上の条件が満たされなくなった場合に撤収が可能であること
(5)武器使用は要員防護のための必要最小限に限ること。



このうち第一の条件は、現在の南スーダンの状態からすると、満たされていない可能性が強い。

1992年のPKO協力法の下では、5原則にあるように、武器使用は「自己や自己の管理下に入った者の防護」に限って認められていたのだが、昨年9月に強行採決で成立し、今年3月に施行された安全保障法制による改正で、離れた場所で襲われたPKO要員やNGOメンバーらを助けるための「駆け付け警護」のなかでの武器使用、および他国部隊との「宿営地共同防衛」などでの武器使用も認められることになり、「必要最小限」の範囲が大幅に拡大している。

安倍政権は、南スーダンの首都ジュバの状態は安定していると強弁しているが、現地をよく知る国際ボランティア関係者は、駆けつけ警護などの任務をもつ部隊の派遣には大きな疑問があるという。現地の事情に詳しい国際ボランティア経験者によれば、
実力部隊を南スーダンに派遣すれば、戦闘に巻き込まれる危険性があること、「駆けつけ警護」などと称して下手に実力行使をすれば、それは政府軍ないし反政府軍への軍事協力と受け取られる可能性が強く、これは、現地で必死の援護活動をしている日本人
NGOへの反感を生むことにもなりかねないという。
日本国際ボランティアセンター南スーダン現地代表の今井高樹(たかき)さんは、
「自衛隊の駆けつけ警護が実施されることで政府軍との関係がこじれ、現地
NGOをとりまく環境が悪化するのではないか」
と懸念している。


このような派遣ありき、武力行使ありきの閣議決定を速やかに撤回させるために、山梨
9条の会は、「戦争させない!9条壊すな山梨行動実行委員会」に参加して、19日行動をはじめ、各種の運動にさらに力を注ぐ決意です。

16-19日集会チラシ両面-1
16-19日集会チラシ両面-2